『昭和天皇をポツダム宣言受諾に導いた哲学者』書評掲載『日本海新聞』6/25

書評 - 2017/07/06
山内 廣隆『昭和天皇をポツダム宣言受諾に導いた哲学者』の書評が『日本海新聞』6/25付に掲載されました。

評者は、石崎嘉彦さん(大和大学教授・摂南大学名誉教授)です。

「…戦後、日本国民は忌まわしい戦争の記憶を忘れることによって復興を成し遂げてきたと言ってよいだろう。だが、忘れてならないこともあることを考える必要がある。この書で取り上げているのは、そんな忘れてならないことの一つなのだ。
 戦前、鳥取生まれの皇国の思想家にして国体論を講じた西晋一郎という人物がいた。この哲学者もその忘れてならない思想家だと著者は言う。昭和天皇が玉音放送で国民に語りかけた終戦詔書には、この哲学者が敗戦前に行った御進講の教えが反映されている可能性があるという。戦後日本の出発点となった決断に、もし西の教えが反映されていたとすれば、それは、哲学が政治を動かした実例と言えるだろう。
 西が御進講で語ったのは、「兵」敗れ「食」尽きても「信」を失ってはならぬという孔子「子貢問政章」における「信」の教えであったが、だとすると、彼は君主に対する「助言者」」としての役割を果たしていたと言い得るからである。西は原爆も敗戦も知ることなく世を去ったが、その哲学は、昭和天皇に敗軍の将たる心構えを説き、敗戦国を統率して国家の一体性を保持して占領軍を受け入れる決断へと導いたことになる。…」

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