『心の科学 第2版』の読者のための参考書籍リスト

特集 - 2017/02/03

2月刊行の新刊、『心の科学 第2版』著者たちによる参考書籍リストです。本書をより深く知るためにお役立てください。章ごとに(1)領域を知るための入門書(2)さらに発展させるための専門書を紹介しています。


第1章 心理学とは(1) (2)
第2章 神経心理学(1) (2)
第3章 感覚・知覚(1) 2)
第4章 学習・言語・認知 第1節(1) (2)第2節(1) (2)第3節(1) (2)
第5章 感  情(1) (2)
第6章 動機づけ(1) (2)
第7章 発  達 第1節(1) (2)第2節(1) (2)
第8章 性  格(1) (2)
第9章 臨床心理学(1) (2)
第10章 社会心理学(1) (2)
***

第1章
(1)この領域を知るために
『サブリミナル・マインド』
下條信輔(著) 中央公論新社 1996 

認知心理学紹介の最良の本の一つで,現代に生きる私たちの必読書です。

『サブリミナル・インパクト』
下條信輔(著) 筑摩書房 2008 

サブリミナル・マインドの続編で,コマーシャル,情動の政治,創造性などに鋭く切り込んでいます。

『心は実験できるか』
ローレン・スレイター(著) 岩坂 彰(訳) 紀伊國屋書店 2005

心に関する様々な実験を紹介したもので,驚きの実験結果が興味深いです。

(2)さらに発展させるために
『教養としての認知科学』
鈴木宏昭(著) 東京大学出版会 2016

心理学を認知科学全体の中で捉え,表象・記憶,思考の重要性を確認することができます。

『認知革命』
ハワード・ガードナー(著) 佐伯 胖・海保博之(監訳) 産業図書 1987

認知科学の誕生・展開についての良書です。認知心理学の誕生を知るための必読書です。

『現代の認知心理学(第1巻~第7巻)』
日本認知心理学会(監修) 北大路書房 2010・2011

現在の認知心理学の到達点をまとめたものです(『第1巻 知覚と感性』『第2巻 記憶と日常』『第3巻 思考と言語』『第4巻 注意と安全』『第5巻 発達と学習』『第6巻 社会と感情』『第7巻 認知の個人差』)。

第2章
(1)この領域を知るために
『新・脳の探検 上』
『新・脳の探検 下』

フロイド・E・ブルーム(著) 中村克樹・久保田 競(監訳) 講談社 2004
図が豊富で様々な領域が網羅されていることからも,脳を理解するための入門書としては最適の一冊です。

『脳のなかの幽霊』
V・S・ラマチャンドラン & サンドラ・ブレイクスリー(著) 山下篤子(訳) 角川書店 1999

様々な患者が示す症状を通じ,私たちが気づかない脳の働きを知ることができます。科学として脳の障害によって生じる症状を理解する書物としては秀逸です。

『脳の学習力』
サラ‐ジェイン・ブレイクモア & ウタ・フリス(著) 乾 敏郎・吉田千里・山下博志(訳) 岩波書店 2006

“学習”という視点から脳が発達的にどのように変化するのかを理解することができます。特に学習障害などの発達障害を理解したい方にとっては役立つ一冊になると思います。

『壊れた脳 生存する知』
山田規畝子(著) 講談社 2004

脳に障害を負った当事者の視点から書かれた書です。「脳のなかの幽霊」や「脳からみた心」で登場するような患者さんたちが,実際にどのように感じているのか,なにで困っているのかを知ることができます。臨床心理学や福祉の分野に興味のある方には必読です。

『神経心理学』
河内十郎(著) 培風館 2013

神経心理学の歴史や本書で触れてきた症状についてより詳しく知ることができます。神経心理学の分野に興味を持ってさらに勉強したい人には最適な一冊です。

(2)さらに発展させるために
『神経心理学入門』
山鳥 重(著) 医学書院 1985

入門とは書いてありますが脳の障害によって生じた症状を理解するための古典的なハンドブックです。30年以上前の出版ですが,神経心理学に興味のある方にとっては今でも座右の書と言えるでしょう。

『記憶の神経心理学』
山鳥 重(著) 医学書院 2002

神経心理学入門の続編となる本です。入門では記憶の項が少なかったため,それを補うのがこの本です。

『よくわかる 失語症セラピーと認知リハビリテーション』
鹿島晴雄・種村 純・大東祥孝(編) 永井書店 2008

脳の損傷によって生じる症状の理解だけではなく,その基礎的な理論や応用(リハビリテーション)まで網羅されています。いわゆる高次脳機能障害を理解したい方にとっては非常に役立つ一冊です。

『カラー版 神経科学―脳の探求』
マーク・F・ベアー,マイケル・A・パラディーソ,& バリー・W. コノーズ(著) 加藤宏司・後藤 薫・藤井 聡・山崎良彦(監訳) 西村書店 2007

脳の機能について広くかつ深く知りたい方に役立つ一冊です。

第3章
(1)この領域を知るために
『Mind Hacks―実験で知る脳と心のシステム』
トム・スタッフォード & マット・ウェッブ(著) 夏目 大(訳) オライリージャパン 2005

様々な知覚現象を平易な文章で解説しています。簡単な実験や,デモを掲載したウェブサイトを多数紹介しており,いろいろな現象を実際に体験できます。

『動物は世界をどう見るか』
鈴木光太郎(著) 新曜社 1995

本章ではほとんど扱いませんでしたが,ヒトの感覚・知覚について生物学的観点から知るためにはヒト以外の動物の知覚について知ることは重要です。様々な動物の視覚について紹介した良書です。

『図解雑学 脳のはたらき 知覚と錯覚 (図解雑学シリーズ)』
宮本敏夫(著) ナツメ社 2002

様々な知覚現象のメカニズムと発生の要因について,豊富な事例をもとに分かりやすい文章とイラストで解説しています。

『錯視完全図解―脳はなぜだまされるのか?(Newton別冊)』
北岡明佳(監修) ニュートンプレス 2007

近年発見された錯視現象を含めて,様々な錯視が豊富に掲載され解説されています。

『視覚科学』
横澤一彦(著) 勁草書房 2010

視覚に関する広範な知見が初学者にも読みやすい形で解説・紹介されています。

(2)さらに発展させるために
『新編 感覚・知覚心理学ハンドブック』
大山 正・今井省吾・和気典二(編) 誠信書房 1994
『新編 感覚・知覚心理学ハンドブック〈Part2〉』
大山 正・今井省吾・和気典二(編) 誠信書房 2007

感覚・知覚研究に関連する膨大な知見を網羅したハンドブックです。高価な本ですが心理学専攻のある大学の図書館には大抵所蔵されており,何か調べ物をするときには大変重宝します。

『心理物理学―方法・理論・応用〈上巻〉』
『心理物理学―方法・理論・応用〈下巻〉』

G・A・ゲシャイダー(著) 宮岡徹他(訳) 北大路書房 2002
感覚・知覚研究を実施するうえで欠かせない,心理物理学の手法について詳しく解説した本です。

『DNAに魂はあるか―驚異の仮説』
フランシス・クリック(著) 中原英臣(訳) 講談社 1995

初期視覚における情報処理について,神経生理学的知見をふんだんに盛り込んで解説した良書です。

第4章第1節
(1)この領域を知るために
『学習力トレーニング』
海保博之(著) 岩波書店 2004

認知心理学から,「集中力を付ける」「問題解決力をつける」「発表力をつける」などについて説明されています。また,「学習力トレーニング」もあり,自分の学習力をチェックしながら学べます。

『学ぶ意欲の心理学』
市川伸一(著) PHP研究所 2001 

学習する際の「やる気」や「意欲」について書かれた本です。「動機づけ」「勉強法と動機づけ」の説明もあります。

『脳の仕組みと科学的勉強法』
池谷裕二(著) ライオン社 2004

脳科学の立場からの勉強法の本です。脳の機能や本質を理解して学習(記憶)しようと提言しています。具体的な学習方法が紹介されています。すべての方法を一般化することはできませんが,とても参考になります。

『動きが心をつくる』
春木 豊(著) 講談社 2011

学習における「動き」「体」の重要性を分かりやすく説明してあります。

(2)さらに発展させるために
『現代の認知心理学5 発達と学習』
市川伸一(編) 北大路書房 2010

現代認知心理学からの「発達」と「学習」の最新の研究成果をまとめたものです。

『PISA型学力を育てる』
梶田叡一(編) 金子書房 2016

21世紀に必要な学力を提起しています。「思考力」や「問題解決」を中心にした新しい知的能力を明らかにしています。

『アクティブ・ラーニングとは何か』
梶田叡一(編) 金子書房 2015

21世紀における新しい学習形態であるアクティブ・ラーニングを分かりやすく説明しています。思考と活性化させ,具体的な課題解決に対して積極的に取り組むための姿勢と力の獲得を目指しています。

『21世紀型スキル』
P・グリフィン,B・マクゴー,& E・ケア(編) 三宅なおみ(編訳) 北大路書房 2014

21世紀型スキルについて分かりやすく説明した本です。21世紀型スキルとは,現代社会の経済的技術的発展の先端を見据えて,高度に知的なスキルとして提唱されたものです。 

第4章第2節 
(1)この領域を知るために
『ことばはどこで育つか』
藤永 保(著) 大修館書店 2001

言語の発達について,進化心理学から遺伝子まで幅広い視点から噛み砕いて述べられています。

『言語と思考』
ニック・ランド(著) 細井友規子・若林茂則(訳) 新曜社 2006

半分が言語についての記述で,言語心理学に関する教科書的な知見を広く知ることができます。

『子どもたちの言語獲得』
小林春美・佐々木正人(編) 大修館書店 1997

本書ではあまり触れられませんでしたが,言語の様々な側面の発達について知ることができます。

(2)さらに発展させるために
『言語を生みだす本能 上』
『言語を生みだす本能 下』

スティーブン・ピンカー(著) 椋田直子(訳) 日本放送出版協会 1995
チョムスキーの理論をベースに,言語の生得的な側面について述べられています。

『言語(認知心理学3)』
大津由紀雄(編) 東京大学出版会 1995

発行はやや古いですが,言語に関する心理学的な研究が網羅され,研究の取りかかりに是非とも手にしたい一冊です。

第4章第3節
(1)この領域を知るために
『認知心理学の新しいかたち』
仲 真紀子(編著) 誠信書房 2005

比較的新しい認知心理学の様々な研究について知ることができます。

『認知心理学ハンドブック』
日本認知心理学会(編著) 有斐閣 2013

認知心理学で研究対象となる認知の諸問題について幅広く学ぶことができます。

(2)さらに発展させるために
『誰のためのデザイン? 増補・改訂版―認知科学者のデザイン原論』
ドナルド・A・ノーマン(著) 岡本 明・安村通晃・伊賀聡一郎・野島久雄(訳) 新曜社 2015

人間の認知機能が現実場面でどのような役割を担い,機能しているのかを考えることができる本です。認知工学の基本的な枠組みを最初に示した本です。

第5章
(1)この領域を知るために
『感情心理学への招待―感情・情緒へのアプローチ (新心理学ライブラリ)』
浜 治世・浜 保久・鈴木直人(著) サイエンス社 2002

感情の基礎理論や感情表出などについて分かりやすくまとめてあります。

『感情と心理学―発達・生理・認知・社会・臨床の接点と新展開』
高橋雅延・谷口高士(編著) 北大路書房 2002 

感情と関連した多くの心理学的研究を簡単にまとめてあります。

『感情』 
ディラン・エヴァンズ(著) 遠藤利彦(訳) 岩波書店 2005

感情の理論だけでなく,感情の機能や最新研究についてまとめてあります。

『記憶と情動の脳科学』
L・J・マッガウ(著) 久保田 競・大石高生(訳) 講談社 2006

生理学の視点から感情と記憶についてまとめてあります。

『「温かい認知」の心理学―認知と感情の融接現象の不思議』
海保博之(編) 金子書房 1997

感情と認知に関する研究を説明しています。

『感情心理学・入門』
大平英樹(編) 有斐閣 2010 

感情に関する心理学の理論を整理し,健康や発達などの様々な視点から感情の役割を説明しています。

(2)さらに発展させるために
『感情:人を動かしている適応プログラム 新装版(コレクション認知科学 9)』
戸田正直(著) 東京大学出版会 2007

認知科学という視点から感情について解説しています。感情の適応的意義についても説明しています。

『感情研究の新展開』
北村英哉・木村 晴(編) ナカニシヤ出版 2006

感情と心理学に関する最新を幅広くまとめています。

『感情科学』
藤田和生(編) 京都大学学術出版会 2007

感情の機能的意味や発生や神経基盤についてまとめています。

『エモーショナル・ブレイン―情動の脳科学』
ジョセフ・ルドゥー(著) 松本 元・小幡邦彦・湯浅茂樹・川村光毅・石塚典生(訳) 東京大学出版会 2003

神経心理学的視点から感情についてまとめています。

『感じる脳―情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』
アントニオ・R・ダマシオ(著) 田中三彦(訳) ダイヤモンド社 2005 

最新の脳科学の知見と哲学者のスピノザの理論の関係について説明しています。

『不安とうつの脳と心のメカニズム―感情と認知のニューロサイエンス』
ダン・J・スタイン(著) 田島 治・荒井まゆみ(訳) 星和書店 2008

不安とうつに関する最新の神経心理学的知見を詳細にまとめています。

『現代の認知心理学(6) 社会と感情』
村田光二(編) 北大路書房 2010

感情と私たちの社会的行動の関係について最新知見をまとめています。

『本当のかしこさとは何か:感情知性(EI)を育む心理学』
箱田裕司・遠藤利彦(編) 日本心理学会(監修) 誠信書房 2015

感情知性の定義や神経基盤や測定方法などの基礎的な側面を体系的に学ぶことができます。さらにどのように感情知性を伸ばすことができるのかという応用的側面も学ぶことができる一冊です。

第6章
(1)この領域を知るために
『行動を起こし,持続する力:モチベーションの心理学』
外山美樹(著) 新曜社 2011

分かりやすく動機づけについて書かれています。初学者でも科学的読み物の感覚で,楽しく読むことができます。

『モティベーションを学ぶ12の理論―ゼロからわかる「やる気の心理学」入門!』
鹿毛雅治(編著) 金剛出版 2012

現代の主要な動機づけ理論について気鋭の動機づけ研究者たちが理論の解説を行っています。

(2)さらに発展させるために
『感情的動機づけ理論の展開:やる気の素顔』
速水敏彦(著) ナカニシヤ出版 2012

これまでの動機づけ理論をレビューしつつ,それらで重要視されてこなかったネガティブな感情の意義について著者独自の視点を交え論じられています。

『学習意欲の理論:動機づけの教育心理学』
鹿毛雅治(著) 金子書房 2013

様々な動機づけの理論と国内外の研究成果について詳細にまとめられた専門書です。動機づけ研究について専門的に学びたい人にお薦めです。

第7章第1節
(1)この領域を知るために
『卒論・修論を書くための心理学理論ガイドブック』
夏堀 睦・加藤弘通(編) ナカニシヤ出版 2007

本章で取り上げたピアジェ,エンゲストロームの理論の他に様々な心理学における理論について平易に解説されています。また理論についての1つの読み方が示されており,特に初学者にとって参考になると思います。

『発達の理論をきずく 別冊発達4』
村井潤一(編) ミネルヴァ書房 1986

ピアジェ,フロイト以外にも,ヴィゴツキー,ルリア,ワロン,エリクソン,ユング,ゲゼルといった理論の概要がコンパクトにまとめられたロングセラーの良書です。

『発達の扉 上』
白石正久(著) かもがわ出版 1994

豊富な写真と平易な記述で,0~6歳までの発達を丁寧に論じた本で,保育・教育現場でも人気の高い本です。発達の面白さをまずは知るための入口になる本だと思います。

『やさしい発達心理学』
都筑 学(編) ナカニシヤ出版 2008

幼児期のみならず,青年期までを平易な記述とトピックでまとめたものです。自分が感心をもてる章から読むことができ,発達全般を知るには良い本だと思います。

(2)さらに発展させるために
『ピアジェとワロン』
浜田寿美男(著) ミネルヴァ書房 1994

ワロンとの対比で,ピアジェの発達論を批判的に位置づけていきます。本章では書ききれなかったピアジェ理論を支える人間観が明らかになるとともに,この理論がもつ難点が明らかにされています。

『知能の誕生』
J・ピアジェ(著) 谷村 覚・浜田寿美男(訳) ミネルヴァ書房 1978

ピアジェの主著の1つ。ピアジェが我が子を対象に行った膨大な観察に基づき,感覚運動期における知能の誕生を論じた書です。具体的なデータから理論が構築される過程が鮮明に描かれており,彼の思想形成の中核を知ることができます。

『エロス論集』
S・フロイト(著) 中山 元(編訳) 筑摩書房 1997

本章で述べた性発達理論についての論文をはじめ,エディプスコンプレックスやナルシズムなど精神分析における重要な概念を提起した論文が多数収められています。

『拡張による学習』
Y・エンゲストローム(著) 山住勝広・松下佳代・百合草禎二・保坂裕子・庄井良信・手取善宏・高橋 登(訳) 新曜社 1999

エンゲストロームの主著。この章で述べた活動システムのアイデアや具体的な分析事例が載っています。

『ヴィゴツキーの方法』
高木光太郎(著) 金子書房 2012

ヴィゴツキーの発達観が独自の視点から描き出されています。ピアジェとの対比もあり,ヴィゴツキーとピアジェの発達観の違いを鮮やかに描き出しています。

第7章第2節
(1)この領域を知るために
『アイデンティティの心理学』
鑪 幹八郎(著) 講談社 1990

エリクソンの考え方を,彼の生い立ちやライフサイクル論から解説しています。

『やさしさの精神病理』
大平 健(著) 岩波書店 1995

「やさしい」の変遷をもとに,現代の青年期における友人関係を考察しています。

『さまよえる青少年の心 アイデンティティの病理』
谷 冬彦・宮下一博(編) 北大路書房 2004

アイデンティティの視点から現代の若者が抱える心理的問題を論じています。

『当事者主権』
中西正司・上野千鶴子(著) 岩波書店 2003

高齢者や障害者といった社会的弱者やマイノリティの人々が,自ら必要とするものを求めていくべきだと述べています。福祉関係者必読の書です。

(2)さらに発展させるために
『幼児期と社会 1・2』
E・H・エリクソン(著) 仁科弥生(訳) みすず書房 1977, 1980

エリクソンがライフサイクル論を論じた最初の書です。生涯にわたって人生をみることの重要性が説かれています。

『人間発達の生態学』
U・ブロンフェンブレンナー(著) 磯貝芳郎・福富 護(訳) 川島書店 1996

環境の中で生きる人間の発達を,個人と環境との関わりの視点から論じています。

『新版キャリアの心理学―キャリア支援への発達的アプローチ』
渡辺三枝子(編) ナカニシヤ出版 2007

キャリア発達にかんする様々な理論が,発達のみならず広範な心理学領域から述べられています。

『迷走する若者のアイデンティティ―フリーター,パラサイト・シングル,ニート,ひきこもり』
白井利明(編) ゆまに書房 2005

現代の若者にかんする問題について,心理学の領域から述べられています。

第8章
(1)この領域を知るために
『性格心理学への招待―自分を知り他者を理解するために改訂版(新心理学ライブラリ)』
詫摩武俊・鈴木乙史・瀧本孝雄・松井 豊(著) サイエンス社 2003

性格に関する理論や研究方法などを簡単にまとめてあります。入門書としておすすめします。

『「モード性格」論―心理学のかしこい使い方』
サトウタツヤ・渡邊芳之(著) 紀伊國屋書店 2005 

性格と血液型の関係について批判的に説明しています。

『タイプA 性格と心臓病』
M・フリードマン & R・H・ローゼンマン(著) 新里里春(訳) 創元社 1993

心臓病になりやすいタイプA型の性格について詳細にまとめてあります。

『心理テストはウソでした』
村上宣寛(著) 講談社 2008

心理テストに騙されないようにするために役に立つ1冊です。

『あなたとわたしはどう違う?―パーソナリティ心理学入門講義』
小塩真司・中間玲子(著) ナカニシヤ出版 2007

性格の測定方法や理論を分かりやすく解説しています。 

『パーソナリティ心理学概論―性格理解への扉』
鈴木公啓(編) ナカニシヤ出版 2012

家族関係・友人関係などの対人関係における性格の役割や性格の形成について分かりやすくまとめています。

(2)さらに発展させるために
『性格研究の技法(シリーズ・心理学の技法)』
杉山憲司・堀毛一也(編) 福村出版 1999

性格研究をする方法や理論を詳細にまとめてあります。

『パーソナリティ心理学(キーワードコレクション)』
二宮克美・子安増生(編) 新曜社 2006

基本的に見開き2ページで,性格に関するトピックスを詳細に説明しています。

『人格発達心理学』
西川隆蔵・大石史博(編) ナカニシヤ出版 2004

性格の発達についてだけでなく,文化と性格などを分かりやすく書いてあります。

『シナプスが人格をつくる―脳細胞から自己の総体へ』
ジョセフ・ルドゥー(著) 谷垣暁美(訳) みすず書房 2004 

神経心理学的視点から性格についての最新知見をまとめてあります。

『心理尺度のつくり方』
村上宣寛(著) 北大路書房 2006

心理尺度の作成過程や信頼性と妥当性について詳細に記述しています。

『パーソナリティ心理学―人間科学,自然科学,社会科学のクロスロード』
榎本博明・安藤寿康・堀毛一也(著) 有斐閣 2009

自己論や進化論や神経科学などの視点から性格の形成や役割を詳細に説明しています。

第9章
(1)この領域を知るために
『臨床心理学入門』 
岩壁 茂・福島哲夫・伊藤絵美(著) 有斐閣 2013
本章で紹介した臨床心理学の代表的な理論的立場に立つ3人の著者のコラボレーションによる分かりやすい入門書です。

『よくわかる臨床心理学(改訂新版)』
下山晴彦(編著) ミネルヴァ書房 2009

臨床心理学の理念,心理査定,介入(心理面接,地域援助),研究にわたって体系的に書かれており,図表も豊富です。

『臨床心理学』
丹野義彦・石垣琢磨・毛利伊吹・佐々木淳・杉山明子(著) 有斐閣 2015

読みごたえのある臨床心理学の本格的概論書です。科学性や科学的根拠を重視して書かれています。

『心理臨床大事典(改訂版)』
氏原 寛他(編) 培風館 2004

臨床心理学を体系的に深く理解するには必読の書です。また,臨床心理学分野の本を読む際,ワードマップとして手元にあると便利です。

(2)さらに発展させるために
『ユング心理学入門』
河合隼雄(著) 培風館 1967

難解なユングの分析心理学を体系的に,しかも分かりやすく解説しています。フロイトの精神分析学との対比においてユングの心理学を理解するには欠かせない概論書です。

『人間性心理学ハンドブック』
日本人間性心理学会(編) 創元社 2012

I部はクライエント中心療法理論やトランスパーソナル心理学を含む人間性心理学の輪郭をコンパクトに分かりやすく説明しています。II部は事典形式のワードマップになっています。

『図解による 学習理論と認知行動療法』
福井 至(編著) 培風館 2008

図表や画像を多用して,第1世代と第2世代の認知行動療法の要点を効率的に学習できるように工夫されています。

第10章
(1)この領域を知るために
『ザ・ソーシャルアニマル 第11版』
エリオット・アロンソン(著) 岡 隆(訳) サイエンス社 2014

本章で紹介した認知不協和理論を提唱したフェスティンガーの弟子であるアロンソンが書いた社会心理学の専門教科書です。社会心理学の主要な領域を網羅し,しかも1つ1つの研究をかなり詳細に記述しています。社会心理学の教科書としての内容の充実度は群を抜いています。私はこの本を読んで社会心理学を志しました。

『グラフィック社会心理学』
池上知子・遠藤由美(著) サイエンス社 2008

社会心理学の全体像を解説した教科書。新しい知見もふんだんに盛り込んであります。図表の配置が見やすくて読みやすい良書です。社会心理学の全体像をつかむためには非常にお勧めの1冊。

『複雑さに挑む社会心理学―適応エージェントとしての人間』
亀田達也・村田光二(著) 有斐閣 2010

本章で紹介した“マイクロ-マクロ関係”を軸として社会心理学の様々な研究を整理した社会心理学の教科書。個人の小さな行動が社会全体へとつながっていることを考えさせられます。

『社会心理学』
池田謙一・唐沢 穣・工藤恵理子・村本由紀子(著) 有斐閣 2010

社会心理学の広範な領域を体系的にカバーした社会心理学の教科書。実験の説明が詳細に載っており,難しい概念であっても理解しやすい本です。

『対人社会心理学重要研究集』 
(シリーズもの全7巻) 誠信書房
集団や環境,対人コミュニケーションなど,社会心理学の領域別に重要な研究を詳細に紹介した本です。これまでに行われてきた実験や調査の実際を知りたい人にはお勧めです。

(2)さらに発展させるために
『セレクション社会心理学』
(シリーズもの) サイエンス社

社会心理学における様々な重要トピックについて,その領域の第1人者が執筆している書籍。1トピック1冊で,現在までに29巻が刊行されています。その領域の詳細がかなり平易な言葉で書かれています。各巻のタイトルはたとえば「恋ごころの科学」,「人はなぜ恥ずかしがるのか」,「人を傷つける心」など。

『ひとの目に映る自己―『印象管理』の心理学入門』
菅原健介(編著) 金子書房 2004

恥,シャイネス,ダイエット,緊張など,“人にどう見られるか”に関する様々なトピックが最新の研究知見を交えながら解説されています。

『信頼の構造:こころと社会の進化ゲーム』
山岸俊男(著) 東京大学出版会 1998

社会心理学の中でも非常に重要な概念である“信頼”について,多くの実験とともに解説した本。現代社会のさまざまな問題を読み解く上で非常に基本となる1冊だと思います。

『儀礼としての相互行為』
アーヴィング・ゴフマン(著) 法政大学出版局 2012

現代の心理学領域で行われている社会心理学は,社会から影響を受ける個人側に特に注目しているという意味で「心理学的社会心理学」と呼ばれます。それに対して社会の側により注目するのが「社会学的社会心理学」です。この領域は特に社会学において発展してきているのですが,その古典ともいうべきものが本書です。ゴフマンの提唱したフェイス(面子)やドラマトゥルギーという概念は,現代の心理学的社会心理学に対しても大きな影響力を持っています。

『フロンティア実験社会科学』
(シリーズもの) 勁草書房

本章で触れることはできませんでしたが,最近の社会心理学の特徴の1つは他分野との協同・融合です。このシリーズは,社会心理学のみならず,経済学や政治学など,その他の社会科学全般を「実験」という手法を軸に統合しようとした非常に興味深いものです。たとえば「文化を実験する」と題したシリーズ第2冊目などでは心理学・社会科学が協同して文化について解明しようとしてきた研究が数多く解説されています。

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