反「大学改革」論

若手からの問題提起

反「大学改革」論

これから大学はどうなっていくのだろうか。今後の大学を担う若手たちが、現状の批判的検討を通じて、より望ましい方向性を模索する

著者 藤本 夕衣
古川 雄嗣
渡邉 浩一
ジャンル 教育・語学・文学  > 高等教育
社会・文化  > 社会学
哲学・倫理
その他  > 建築・工学
出版年月日 2017/06/18
書店発売日 2017/06/18
ISBN 9784779510816
判型・ページ数 4-6 ・ 264ページ
定価 2,640円(税込)

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これから大学はどうなっていくのだろうか。
今後の大学を担う若手研究者、若手大学教員たちが、なし崩し的に行われつつある大学改革の現状を批判的に検討することを通じ、より望ましい方向性を模索しながら、未来の展望を切り開こうとする問題提起の書。


かくして、いま大学教員は、「外」からの強制的な圧力と「内」からの懐疑のまなざしとのはざまで、日々、ある者は絶望交じりのため息と愚痴を漏らし、ある者は苦悩しながら夜中まで研究室で頭を抱えている。「僕たちはもうすぐ定年だからまだいいけど、君たちは本当に大変だよ」。上の世代から、そんな声をかけられることも少なくない。しかし、たしかにそのとおりなのである。大学はいま、その理念や存在意義そのものが根本的な問いなおしを迫られている。それを、日々の実践のなかで、もっとも切実に問わざるをえず、またぜひとも問わなければならないのは、たしかに、これからの大学を担っていく「若手」にほかならないのである。(「はじめに」より)

 

執筆者紹介(五十音順,*は編者)

井上義和(いのうえ よしかず)
帝京大学総合教育センター准教授
担当:第6章

児島功和(こじま よしかず)
山梨学院大学経営情報学部特任准教授
担当:第7章

坂本尚志(さかもと たかし)
京都薬科大学一般教育分野准教授
担当:第10章

佐藤真一郎(さとう しんいちろう)
量子科学技術研究開発機構高崎量子応用研究所
担当:第8章

杉本 舞(すぎもと まい)
関西大学社会学部准教授
担当:第13章

高野秀晴(たかの ひではる)
仁愛大学人間生活学部准教授
担当:第5章

二宮 祐(にのみや ゆう)
群馬大学学術研究院准教授
担当:第3章

藤田尚志(ふじた ひさし)
九州産業大学国際文化学部准教授
担当:第4章

藤本夕衣*(ふじもと ゆい)
清泉女子大学人文科学研究所特任講師
担当:第9章

古川雄嗣*(ふるかわ ゆうじ)
北海道教育大学旭川校准教授
担当:はじめに,第1章

堀川 宏(ほりかわ ひろし)
京都大学文学部他非常勤講師
担当:第12章

宮野公樹(みやの なおき)
京都大学学際融合教育研究推進センター准教授
担当:第2章

渡邉浩一*(わたなべ こういち)
大阪経済法科大学特別専任准教授
担当:第11章

#2017

第一部 大学改革はどこに向っているのか

第一章 PDCAサイクルは「合理的」であるか 古川雄嗣

第一節 はじめに
第二節 人間の物象化に対する批判
第三節 経営学的な無理解に対する批判
第四節 トップダウンであることに対する批判
第五節 むすびに代えて

第二章 産学連携を問い直した結果としての産学連携 宮野公樹

第一節 はじめに
第二節 日本における産学連携の展開
第三節 文部科学省からみた「産学連携」の問題
第四節 産業界からみた「産学連携」の問題
第五節 大学からみた「産学連携」の問題
第六節 「新しい産学連携」に向けて

第三章 大学教育と内外事項区分論 二宮 祐
――「利益の供与」による行政指導の問題

第一節 はじめに
第二節 行政機関から交付される補助金
第三節 内的事項に対する行政指導
第四節 おわりに

第四章 パフォーマティヴの脱構築 藤田尚志
――デリダの『哲学への権利』における哲学的大学論

第一節 パフォーマンスとポピュラリティ――現代日本のハイパー・メリトクラシー
第二節 哲学と制度――脱構築とは何か
第三節 デリダのパフォーマティヴ論
第四節 カント大学論の脱構築
第五節 結論に代えて――大学は「社会への入り口」か「会社への入り口」か

第二部 学生・院生はどのような状況にあるか

第五章 教化の場としての大学 高野秀晴

第一節 試験対策に臨む
第二節 「教育史は後回しでいい」
第三節 「教化」と「教育」
第四節 教養と受験情報のはざまで
第五節 用が無用に変わるとき

第六章 参加型パラダイムは民主化の夢を代替しうるか? 井上義和
――ポスト代表制の学生自治

第一節 民主化の夢、ふたたび
第二節 砦と繭――二つの学生自治観
第三節 ポスト代表制の学生自治
第四節 参加型というパラダイム

第七章 居住の移行と大学生活 児島功和

第一節 はじめに――問題設定
第二節 使用データの概略
第三節 ひとり暮らしをする大学生の背景
第四節 ひとり暮らしが大学生活に与える影響
第五節 おわりに

第八章 理工系大学院の価値を問う 佐藤真一郎

第一節 はじめに――修士の増加と博士の不人気
第二節 ブラック化する理工系大学院
第三節 大学院教育の実質化と質保証の問題
第四節 改善の糸口はあるか
第五節 おわりに――大学院の社会的役割を問いなおす

第三部 学士課程教育はどうあるべきか

第九章 グローバル化時代の大学に求められる「教養」とは? 藤本夕衣
――日本の「古典」に根差した「実践力」

第一節 グローバル化への対応は不可避か?
第二節 「グローバル人材」をめぐる問題
第三節 グローバル化時代に求められる「教養」
第四節 学生の生活に根差した学問へ

第十章 専門教育は汎用的でありえるか 坂本尚志
――ジェネリック・スキルとバカロレア哲学試験

第一節 はじめに
第二節 ジェネリック・スキル論の展開とその問題点
第三節 専門性と汎用性――専門教育は役に立たないのか?
第四節 規範性と汎用性――「型」の習得は自由な思考を妨げるか?
第五節 おわりに――ジェネリック・スキル論を超えるために

第十一章 General educationと学士課程教育 渡邉浩一
――理念の再導入のために

第一節 はじめに
第二節 General educationはどう受けとめられてきたか
第三節 General educationの概念史のために
第四節 General educationは何でありうるか

第十二章 古典語教育の可能性 堀川 宏

第一節 なぜ古典語教育なのか?
第二節 古典語を学ぶ動機と目的意識
第三節 古典語の学習をとおしての気づき
第四節 古典語教育の可能性

第十三章 科学史教育の歴史と「役に立つ」こと  杉本 舞
――戦後新制大学における科学史教育の位置づけ

第一節 科学史とは――大学と学問への批判的視座
第二節 戦前の黎明期――「余暇」としての科学史
第三節 戦後の大学基準協会――「一般教育」に役立つ科学史
第四節 科学史関連科目の設置――動き出す科学史学会
第五節 科学史家養成の開始――歴史学を目指す科学史
第六節 大綱化以降の科学史教育――「社会的要請」に乗る
第七節 「役に立つ」を問う科学史に向けて

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