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交錯と共生の人類学  新刊

オセアニアにおけるマイノリティと主流社会

交錯と共生の人類学

オセアニア島嶼部における移民・「混血」,性・障害などの民族誌事例を提示し,現代世界における人類学的な共生の論理を追究する。

著者 風間 計博
ジャンル 地理学・人類学 > 人類学
出版年月日 2017/03/31
ISBN 9784779511448
判型・ページ数 A5・320ページ
定価 本体5,200円+税
 

目次

はじめに 

序 章 現代世界における排除と共生(風間計博)
 1 問題の所在
 2 排他と攻撃性
 3 エスニシティと排他性
 4 マイノリティの存在証明
 5 オセアニア島嶼部における在地の論理と共生
 6 本書を構成する諸論文の概略 

第Ⅰ部 移動する人間と「混血」

第1章 鯨歯を纏い,豚を屠る
フィジーにおけるヴァヌアツ系フィジー人の自己形成の視点からみた共存(丹羽典生)
 1 はじめに  
 2 ヴァヌアツ人のフィジーへの定着
 3 ヴァヌアツ系としての自己形成
 4 複合的な自己の形成  
 5 最 後 に 

第2章 「その他」の人々の行き交う土地
フィジー首都近郊に生成する「パシフィック人」の共存(風間計博)
 1 はじめに 
 2 「その他」の人々 
 3 スヴァ在住のキリバス系住民
 4 オールド・カマーのヴェイサリ地区住民
 5 ヴェイサリを行き交う人々 
 6 ネットワークの結節点としてのフリーホールド地 
 7 おわりに 

第3章  ニュージーランド・マオリの「混血」をめぐる言説と実態(深山直子)
 1 はじめに
 2 マオリの「混血」の概史
 3 国勢調査における「混血」マオリの可視化
 4 現代におけるマオリ・アイデンティティを巡る言説
 5 フィールドワークから考えるマオリ・アイデンティティ
 6 おわりに  

第4章 ヤップ離島社会の共生戦略におけるアイデンティティとネットワーク(柄木田康之)
 1 はじめに 
 2 サウェイ交易ネットワーク,公共貨幣経済,二元的州政府 
 3 民主化と首長会議の形成  
 4 公務員の離島アイデンティティ 
 5 ヤップ本島におけるコミュニティ用地獲得戦略
 6 葬儀における公務員アソシエーションと交易パートナー
 7 む す び

第Ⅱ部 新たなマイノリティの生成:性・高齢者・障害

第5章 マフとラエラエの可視化と不可視化
フランス領ポリネシアにおける多様な性の共生(桑原牧子)
 1 序  論  
 2 性の名づけとマイノリティ化
 3 タヒチ島とボラボラ島の性カテゴリーの多様化  
 4 タヒチ島とボラボラ島のマフ,ラエラエ,レズビエンヌ
 5 考  察 
 6 結  論 

第6章 母系社会・パラオにおけるマイノリティは誰か?(安井眞奈美)
 1  ローカルな社会における「男女平等」というグローバルな基準
 2 母系社会・パラオの概観  
 3 ベラウ女性会議の20 年  
 4 ベラウ女性会議のさまざまな評価 
 5 シューカンを担うパラオ女性の現状
 6 結  語 

第7章 高齢者の包摂とみえない異化
ヴァヌアツ・アネイチュム島における観光業とカヴァ飲み慣行(福井栄二郎)
 1 高齢者とマイノリティ 
 2 ヴァヌアツ・アネイチュム島の観光業 
 3 平等とみえない異化 
 4 ま と め 

第8章 「障害」をめぐる共存のかたち
サモア社会における障害支援NGO ロト・タウマファイによる早期介入プログラムの事例から(倉田 誠)
 1 はじめに
 2 サモア社会における障害者支援の展開 
 3 サモア社会における能力観  
 4 ロト・タウマファイによる早期介入プログラムの実践
 5 おわりに 

第Ⅲ部 差異をめぐる記憶と感情

第9章 帝国の記憶を通した共生
ミクロネシアにおける沖縄人の慰霊活動から(飯髙伸五)
 1 はじめに 
 2 沖縄人とミクロネシア人の邂逅 
 3 戦後の慰霊活動 
 4 帝国の記憶を通じた共生 
 5 おわりに  

第10章 狂気に突き動かされる社会
ニューギニア高地エンガ州における交換と「賭けられた生」(深川宏樹)
 1 序  論 
 2 狂気の民俗理論  
 3 狂気と呪い  
 4 結  論:狂気に突き動かされる社会  

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内容説明

人類学的な共生の論理とは何か

オセアニア島嶼部における移民・「混血」,性・障害,記憶・感情といった民族誌事例を提示しながら,錯綜した現代世界における新たな共生の図式を描くための論理を追究する。

 

本書は,オセアニア島嶼部におけるマイノリティの共生とその交錯を主題とし,歴史的過去から現代に至る移動と「混血」,性や障害,記憶や感情といった概念を軸に,フィールドワークに基づく民族誌的事例を論じた文章を束ねたものである。世界の内にある人間の営みに排他や暴力が必然的に伴うにせよ,オセアニア島嶼部の生活実践や在地の論理から,軋轢を緩和・消失させる術を身につける,小さな手がかりを得ることはできないだろうか。(「はじめに」より)

 

執筆者紹介(* は編者)
風間計博 *(かざま・かずひろ)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授
博士(文学)
専門:人類学,オセアニア社会研究
主要著書・論文:
『窮乏の民族誌―中部太平洋・キリバス南部環礁の社会生活』大学教育出版(2003),『共在の論理と倫理―家族・民・まなざしの人類学』[共編]はる書房(2012),『オセアニア学』京都大学学術出版会[共編](2009),「序 現代世界における人類学的共生の探究」『文化人類学』81 巻3 号(2016)
執筆担当:はじめに,序章,第2 章

丹羽典生(にわ・のりお)
国立民族学博物館研究戦略センター准教授
博士(社会人類学)
専門:社会人類学,オセアニア地域研究
主要著書・論文:
『脱伝統としての開発―フィジー・ラミ運動の歴史人類学』明石書店(2009),『〈紛争〉の比較民族誌―グローバル化におけるオセアニアの暴力・民族対立・政治的混乱』[編]春風社(2016),『現代オセアニアの〈紛争〉―脱植民地期以降のフィールドから』[共編]昭和堂(2013)
執筆担当:第1章

深山直子(ふかやま・なおこ)
首都大学東京社会科学研究科准教授
博士(社会人類学)
専門:社会人類学,先住民研究,オセアニア研究,沖縄研究
主要著書・論文:
『現代マオリと「先住民の運動」―土地・海・都市そして環境』風響社(2012),「先住民と暴力―マオリ像の変遷に関する試論」丹羽典生[編]『〈紛争〉の比較民族誌―グローバル化におけるオセアニアの暴力・民族対立・政治的混乱』春風社(2016)
執筆担当:第3章

柄木田康之(からきた・やすゆき)
宇都宮大学国際学部教授
文学修士
専門:文化人類学,オセアニア地域研究
主要著書・論文:
『ミクロシアを知るための 60章』印東道子[編]明石書店(2015),『オセアニアと公共圏』[共編]昭和堂(2012),「ヤップ州離島から見た国家と国民のスケッチ」須藤健一[編]『グローカリゼーションとオセアニアの人類学』風響社(2012),「ミクロネシア連邦離島社会の主流派島嶼への統合と異化」『文化人類学』81 巻 3 号( 2016)
執筆担当:第4章

桑原牧子(くわはら・まきこ)
金城学院大学文学部准教授
Ph.D.
専門:文化人類学
主要著書・論文:
Tattoo: An Anthropology. Oxford: Berg. (2005),“Living as and Living with Mahu and Raerae:Geopolitics, Sex, and Gender in the Society Islands”. Gender on the Edge: Transgender, Gay, and Other Pacific Islanders. N. Besnier, K. Alexeyeff eds., Honolulu; University of Hawai‘i Press.( 2014)
執筆担当:第5章

安井眞奈美(やすい・まなみ)
天理大学文学部教授
博士(文学)
専門:文化人類学,日本民俗学
主要著書・論文:
『怪異と身体の民俗学―異界から出産と子育てを問い直す』せりか書房(2014),『出産環境の民俗学―〈第三次お産革命〉にむけて』昭和堂(2013),“The Participation of Youth and the Transmission of Arts at the 11th Festival of Pacific Arts, Solomon Islands 2012”. The Festival of Pacific Arts:Celebrating over 40 years of Cultural Heritage. K. Stevenson with K. Teaiwa eds., USP Press.(2016),「パラオ共和国における出産のグローカリゼーション―出産儀礼に関する近年の動き」須藤健一[編]『グローカリゼーションとオセアニアの人類学』風響社(2012)
執筆担当:第6章

福井栄二郎(ふくい・えいじろう)
島根大学法文学部准教授
博士(学術)
専門:社会人類学
主要著書・論文:
「つながる思考としての多配列」白川千尋・石森大知・久保忠行[編]『多配列思考の人類学―差異と類似を読み解く』風響社(2016),「名の示すもの―ヴァヌアツアネイチュム島における歴史・土地・個人名」『文化人類学』77 巻2 号(2012)
執筆担当:第7章

倉田 誠(くらた・まこと)
東京医科大学医学部講師
博士(学術)
専門:医療人類学,障害学,生命倫理学
主要著書・論文:
「類似性から知識の動態へ サモア社会の病気概念からみた多配列分類にもとづく社会分析の再検討」白川千尋・石森大知・久保忠行[編]『多配列思考の人類学―差異と類似を読み解く』風響社(2016),「グローバル化する精神科医療とサモアの精神疾患―マファウファウの病気をめぐって」須藤健一[編]『グローカリゼーションとオセアニアの人類学』風響社(2012)
執筆担当:第8章

飯髙伸五(いいたか・しんご)
高知県立大学文化学部准教授
博士(社会人類学)
専門:社会人類学,オセアニア研究
主要著書・論文:
「パラオ・サクラカイ―『 ニッケイ』と親日言説に関する考察」三尾裕子・遠藤央・植野弘子[編]『帝国日本の記憶―台湾・旧南洋群島における外来政権の重層化と脱植民地化』慶應義塾大学出版会(2016),「「ニッケイ」の包摂と排除―ある日本出自のパラオ人の埋葬をめぐる論争から」『文化人類学』81 巻2 号(2016),“Remembering Nan’yo from Okinawa: Deconstructing the FormerEmpire of Japan through Memorial Practices.” History and Memory. Vol.27 No.2( 2015)
執筆担当:第9章

深川宏樹(ふかがわ・ひろき)
国立民族学博物館先端人類科学研究部機関研究員
博士(文学)
専門:文化人類学
主要著書・論文:
「敵と結婚する社会―ニューギニア高地における紛争の拡大と収束の論理」丹羽典生[編]『〈紛争〉の比較民族誌―グローバル化におけるオセアニアの暴力・民族対立・政治的混乱』春風社(2016),「身体に内在する社会性と「人格の拡大」―ニューギニア高地エンガ州サカ谷における血縁者の死の重み」『文化人類学』81 巻1 号(2016)
執筆担当:第10章

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