連邦制の逆説?
効果的な統治制度か
統合か分離か
かつて連邦制は多元的な社会における統合のあり方として、効果的な統治制度と考えられていた。しかし、連邦制をとり分権化を推し進めた国々では近年分離独立問題をはじめさまざまな問題が噴出し、その効果に疑問も付されている。はたして連邦制は対立と分離をもたらす統治制度なのか。あるいは対立を解消し、統合をもたらすものなのか。統合と分離という二つのベクトルに注目しながら、現代における連邦制の意義を再考する本格的研究。
●著者紹介
松尾秀哉(まつお・ひでや)
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。北海学園大学法学部教授。ヨーロッパ政治・比較政治学。『物語ベルギーの歴史』(中公新書)、『連邦国家ベルギー』(吉田書店)、ほか。
近藤康史(こんどう・やすし)
名古屋大学大学院法学研究科博士後期過程修了。筑波大学人文社会系准教授。政治学・イギリス政治。『社会保障と福祉国家のゆくえ』(共編著、ナカニシヤ出版)、『社会民主主義は生き残れるか』(勁草書房)、ほか。
溝口修平(みぞぐち・しゅうへい)
東京大学大学院総合文化研究科博士課程満期退学。中京大学国際教養学部准教授。比較政治学・ロシア政治。『ロシア連邦憲法体制の成立』(北海道大学出版会)、ほか。
柳原克行(やなぎはら・かつゆき)
立命館大学大学院法学研究科博士後期課程修了。大同大学教養学部人文社会教室准教授。『模索する政治』(分担執筆、ナカニシヤ出版)、ほか。
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久保田徳仁(くぼた・のりひと)
防衛大学国際関係学科准教授。国際政治学・安全保障論。
森分大輔(もりわけ・だいすけ)
聖学院大学政治経済学部准教授。西洋政治思想。
臼井陽一郎(うすい・よういちろう)
新潟国際情報大学国際学部教授。EU政治。
小松﨑利明(こまつざき・としあき)
聖学院大学政治経済学部助教。国際法・平和学。
永田智成(ながた・ともなり)
首都大学東京都市教養学部助教。西洋政治史・スペイン政治。
小舘尚文(こだて・なおのり)
アイルランド国立大学ダブリン校社会科学・法学部専任講師。比較社会政策。
東原正明(ひがしはら・まさあき)
福岡大学法学部准教授。政治過程論・オーストリア現代政治。
馬場優(ばば・まさる)
福岡女子大学国際文理学部准教授。国際政治史。
中村健史(なかむら・たけふみ)
筑波大学大学院人文社会科学研究科特任研究員。
鈴木絢女(すずき・あやめ)
同志社大学法学部准教授。東南アジア地域研究・比較政治学。
見市建(みいち・けん)
岩手県立大学総合政策学部准教授。比較政治学・東南アジア地域研究。
石井梨紗子(いしい・りさこ)
福岡大学商学部専任講師。行政学。
今村真央(いまむら・まさお)
山形大学人文学部准教授。東南アジア地域研究・人文地理学。
石神圭子(いしがみ・けいこ)
日本学術振興会RPD。ブリティッシュ・コロンビア大学政治学部リサーチ・フェロー。アメリカ政治。
第Ⅰ部 理論編
第1章 連邦制と民主主義
――「連邦制の効果」についての比較研究に向けて
第2章 連邦制と民族紛争の計量分析
――研究の進展と課題・展望
第3章 連邦共和国の形成
――連邦主義とアメリカ革命
第4章 EUと連邦主義
――フェデラル・ヨーロッパの行方
コラム① 国際法からみた地域の分離独立
第Ⅱ部 事例編
第5章 ベルギーにおける多極共存型連邦制の効果
――2014年の連立交渉を中心に
第6章 スペインにおける自治州国家制の導入とその効果
第7章 イギリスにおける連邦的解決をめぐる政治とスコットランド
――安定か不均衡な連合の継続か
第8章 中央集権的な連邦制下の分権的政党
――オーストリアにおける連邦制と州政治の変容
第9章 連邦国家か国家連合か
――「複雑な生き物」オーストリア=ハンガリー
第10章 ロシアにおける連邦制の変容とその効果
第11章 ボスニア・ヘルツェゴヴィナにおける民族対立と連邦制
――固定化された対立と国際社会の対応
コラム② ウクライナ
コラム③ ユーゴスラヴィア崩壊
第12章 マレーシアにおける一党優位体制とハイブリッドな連邦制
第13章 インドネシアの連邦制なき「世界一の地方分権化」
第14章 途上国での分権改革は難しいのか?
――フィリピンの事例からの考察
コラム④ 少数民族と天然資源
――ミャンマーでの連邦制をめぐる議論
第15章 カナダ連邦制と憲法秩序の再編
――ケベック・ナショナリズムに与える効果
第16章 アメリカにおける連邦制の成立と発展
――20世紀後半の都市コミュニティと福祉政策をめぐるその効果
あとがき
索引〔人名/事項〕