〈ケアの思想〉の錨を

3.11、ポスト・フクシマ〈核災社会〉へ

〈ケアの思想〉の錨を

死者・被災者の〈沈黙の声〉に向合い,災禍を記憶に刻み,痛みを思想に繋ぐ人文知の結集。多彩な視点から震災と日本社会を問う。

著者 金井 淑子
ジャンル 哲学・倫理  > 倫理学
出版年月日 2014/04/21
ISBN 9784779507731
判型・ページ数 4-6 ・ 346ページ
定価 2,750円(税込)

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災禍を記憶し痛みを思想に繋ぐ人文知の結集

死者・被災者の〈沈黙の声〉に向き合い,災禍を記憶に刻み,痛みを思想につなぐ人文知の結集。詩歌,宗教,歴史,脱原発,そしてケア――,多彩かつ自由な視点から震災と日本社会を問い直す。

 

【著者】(執筆順,*印は編者)
金井淑子(かない・よしこ)
 東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了。哲学・倫理学専攻。立正大学文学部哲学科教授。『倫理学とフェミニズム』(ナカニシヤ出版,2013年),『依存と自立の倫理』(ナカニシヤ出版,2011年),『異なっていられる社会を』(明石書店,2008年),他。
  〔担当〕 序章,あとがき

村上喜良(むらかみ・きよし)
 上智大学大学院哲学研究科博士後期課程中途退学。キリスト教思想・生命倫理学専攻。立正大学文学部教授。『基礎から学ぶ生命倫理学』(勁草書房,2008年),T.シュランメ『はじめての生命倫理』〔翻訳〕(勁草書房,2004年), J.マクウォーリー『ハイデガーとキリスト教』〔翻訳〕(勁草書房,2013年),他。
  〔担当〕 第1章

竹内整一(たけうち・せいいち)
 東京大学大学院人文科学研究科博士課程中途退学。倫理学・日本思想史専攻。鎌倉女子大学教授・東京大学名誉教授。『やまと言葉で哲学する――「おのずから」と「みずから」のあわいで』(春秋社,2012年),『花びらは散る 花は散らない』(角川選書,2011年),『「かなしみ」の哲学』(NHKブックス,2009年),他。
  〔担当〕 第2章

清水海隆(しみず・かいりゅう)
 立正大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。仏教社会福祉学専攻。立正大学社会福祉学部教授。『考察 仏教福祉』(大東出版社,2003年),『大乗山法音寺の信仰と福祉』〔共著〕(仏教タイムス社,2011年),『大乗山法音寺の源流と近現代仏教福祉』〔共著〕(仏教タイムス社,2011年),他。
  〔担当〕 第3章

藤井貞和(ふじい・さだかず)
 東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。日本古典文学専攻。東京大学名誉教授。『文法的詩学』(笠間書院,2012年),『人類の詩』(思潮社,2012年),『春楡の木』(思潮社,2011年),他。
  〔担当〕 第4章

奥田晴樹(おくだ・はるき)
 東京教育大学文学部卒業。幕末維新史専攻。立正大学文学部史学科教授。『地租改正と割地慣行』(岩田書院,2012年),『明治国家と近代的土地所有』(同成社,2007年),『日本近世土地制度解体過程の研究』(弘文堂,2004年),他。
  〔担当〕 第5章

関 曠野(せき・ひろの)
 早稲田大学文学部卒業。思想史専攻。評論家。『フクシマ以後――エネルギー・通貨・主権』(青土社,2011年),『民族とは何か』(講談社現代新書,2001年),ヒレア・ベロック『奴隷の国家』〔翻訳〕(太田出版、2000年),他。
  〔担当〕 第6章

菅 孝行(かん・たかゆき)
 東京大学文学部卒業。劇作家・評論家。河合塾非常勤講師・梅光学院大学文学部特任教授。『9・11以後丸山真男をどうよむか』(河合出版,2004年),『戦う演劇人』(而立書房,2007年),『天皇制論集 全3巻』(御茶の水書房,2014年から順次刊行),他。
  〔担当〕 第7章

阿木津 英(あきつ・えい)
 九州大学文学部卒業。短歌創作・短歌評論。歌人。日本女子大学文学部非常勤講師。『方代を読む』(現代短歌社,2012年),『二十世紀短歌と女の歌』(學藝書林,2011年),『巌のちから』(短歌研究社,2011年),他。
  〔担当〕 第8章

安藤紀典(あんどう・のりすけ)
 東京大学大学院教育学研究科博士課程中退。関心領域は社会思想・社会運動。河合塾講師。『<格差社会>をめぐる論争』(上・下)(2007年),「作品で読む関東大震災」シリーズ(2012年より継続、以上私家版),池山重朗『原爆・原発』〔復刻・解説〕(明石書店,2012年),他。
  〔担当〕 第9章

序章 私のフクシマ・ノート (金井淑子)
    ――「福島」の「収束」ではない、「フクシマ」の脱原発・廃炉への「始まり」のために、そして「ふくしま」の記憶を掘り起こすために――
 1 はじめに
    ――3・11、3・12、4・22あるいは1986/2011――
 2 福島の「収束」への動きと、ドイツの「脱原発」の選択
 3 私のあの日、3・11
    ――震災におけるケアと正義――
 4 「悲惨・悲嘆の只中に、ケアの思想の錨を!」
 5 支援・援助のことばの難しさ
    ――「心のケアお断り」の張り紙から――
 6 線量計と共に生きるフクシマ
    ――「除染・帰村」の川内フィールドワークから――
 7 「同心円のパラドックス」
    ――見えない壁を打ち破るために――
 8 「3・11と3・12は一緒くたにしてはいけない」
 9 おわりに

第1章 キリスト教の立場から震災を考える  (村上喜良)
 1 はじめに
 2 類似した聖書物語
 3 それでもなお希望を
 4 最愛の人との死別の意味と癒しと支援
 5 自然と科学技術
 6 おわりに

第2章 無常感という思想感情  (竹内整一)
 1 「いたむ」ということ
 2 「天然の無常」論
 3 「おのずから」と「みずから」の「あわい」
 4 「はかる」と「はかない」
 5 肯定としての無常観

第3章 仏教は災害をどのように捉えるか  (清水海隆)
 1 はじめに
 2 仏教で示される「災害」
 3 災害を契機とした仏教者
 4 現代の三災
 5 災害・被害発生の理由
 6 東日本大震災から何を学ぶか
 7 おわりに

第4章 福島の表現する詩人たち  (藤井貞和)
 1 若松丈太郎の予告
 2 クレマチスの会からの発信
 3 五十嵐進の句、文
 4 和合亮一、ツイッター詩

第5章 関東大震災と帝都復興  (奥田晴樹)
 1 はじめに
 2 関東大震災はどのような歴史的条件の下で起こったのか
 3 関東大震災はどのような災害だったのか
 4 震災後の帝都復興とはどのようなものだったか
 5 まとめにかえて

第6章 3・11後の日本社会・グローバリゼーションからローカリゼーションへ  (関 曠野)
     ――幕末開国期に視点をリセットして、日本の歴史を再考する――
 1 はじめに
    ――戦後日本のアメリカナイズの一環としてあった原発――
 2 開国の意味を改めて問う
 3 明治維新はフランス革命のようなものではない
 4 「新しい素晴らしい時代の始まり」ではなかった
 5 ギャンブル的日露戦争の勝利から第二次世界大戦へ
 6 「ファシズム対民主主義」というプロパガンダ
 7 そして、フクシマ
    ――グローバリゼーションからローカリゼーションへ――
 8 おわりに
    ――幕末開国期にたちかえって――

第7章 原発廃絶運動と差別批判のアポリアを超えて  (菅 孝行)
 1 〈ふつうの子供産めますか?〉
 2 恐怖の煽動でなく事実の解明を
 3 障害者の不遇に対する社会的責任
 4 相克を力に替える運動を
 5 〈原発全廃〉からの未来展望

第8章 フクシマの沈黙の闇に届く歌をもとめて  (阿木津 英)
     ――ドキュメンタリー化する短歌と共苦の衝動から生まれる想像力と――
 1 はじめに
 2 フクシマの沈黙
 3 長谷川櫂『震災歌集』をめぐって
 4 3・11以後の現実に生きて
 5 おわりに

第9章 脱原発へドイツの挑戦  (安藤紀典)
 1 「フクシマ」はドイツでどう報道されたか
 2 2022年までに原発全廃を決定
 3 シュレーダー政権下の「脱原発合意」
 4 原子力戦争40年
 5 脱原発のその先へ

 あとがき

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