社会的なもののために

社会的なもののために

新自由主義に対抗しうる〈社会的なもの〉の理念とは何か。来るべき変革の「政治」の構想のために、気鋭の思想家たちが徹底討議。

著者 市野川 容孝
宇城 輝人
宇野 重規
小田川 大典
川越 修
北垣 徹
斎藤 光
酒井 隆史
中野 耕太郎
前川 真行
道場 親信
山森 亮
ジャンル 社会・文化  > 社会学
哲学・倫理  > 現代思想
法律・政治  > 法哲学・政治思想
出版年月日 2013/01/01
ISBN 9784779507243
判型・ページ数 A5 ・ 392ページ
定価 3,080円(税込)

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平等と連帯を志向する
理念としての〈社会的なもの〉。
暗闇の時代に、その潜勢力を
来るべき政治にむけて
徹底的に討議する。 


「はじめに」より抜粋

本書が一貫して問題にするものの一つは、政治的な理念としての社会的なものである。しかし、本書は政治的なマニフェストではない。社会的なものが何であったか、何でありうるかを正負両面で批判的に問いなおすことが、本書の目的である。その意味で私たちは、社会的なものを学問的に問いなおしたつもりである。本書は政治的マニフェストのはるか手前、あるいはその後ろに位置するものでしかない。各章は、基調報告とそれをふまえた討論からなる。各章の討論を通じて、私たちは見解の一致を見るよりは、その相違や対立に数多く直面することになった。このようなせめぎ合いは、社会的なものがこれからしばらく経験しなければならない闇夜の深さを告知している。しかし、このようなせめぎ合いなしには、その再生も決してありえないだろう。少なくとも私はそう考えている。

 

【著者紹介】(*は編者) 

市野川容孝(いちのかわ・やすたか)*
1964年生まれ。社会学。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。東京大学大学院総合文化研究科教授。

宇城輝人(うしろ・てるひと)*
1967年生まれ。社会学・社会思想史。京都大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。福井県立大学学術教養センター准教授。

宇野重規(うの・しげき)
1967年生まれ。政治思想史・政治哲学。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。東京大学社会科学研究所教授。

小田川大典(おだがわ・だいすけ)
1967年生まれ。政治思想史・政治哲学。神戸大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。岡山大学大学院社会文化科学研究科教授。

川越 修(かわごえ・おさむ)
1947年生まれ。社会経済史。一橋大学大学院社会学研究科博士課程退学。同志社大学経済学部教授。専攻はドイツ近現代社会経済史。 

北垣 徹(きたがき・とおる)
1967年生まれ。社会学・社会思想史。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。西南学院大学文学部教授。

斎藤 光(さいとう・ひかる)
1956年生まれ。科学史。東京大学大学院理学研究科博士課程修了。京都精華大学人文学部教授。

酒井隆史(さかい・たかし)
1965年生まれ。社会思想史。早稲田大学文学研究科博士課程単位取得退学。大阪府立大学人間社会学部准教授。

中野耕太郎(なかの・こうたろう)
1967年生まれ。アメリカ現代史。京都大学大学院文学研究科博士後期課程中途退学。大阪大学大学院文学研究科准教授。

前川真行(まえがわ・まさゆき)
1967年生まれ。思想史。京都大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。大阪府立大学地域連携研究機構生涯教育センター准教授。

道場親信(みちば・ちかのぶ)
1967生まれ。社会運動史。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。和光大学現代人間学部准教授。

山森 亮(やまもり・とおる)
1970年生まれ。社会政策。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。同志社大学経済学部教授。

はじめに(市野川容孝)

第一章 ネオリベラリズムと社会的な国家

基調報告(市野川容孝)

討議
一、連帯の可能性を問う
社会的なものの可能性としての「連帯」/「連帯」と「友愛」/社会的なものとナショナルなもの

二、何をどのように社会化するか?
社会的所有とは何か/専門化支配と消費者主権/国有化、市場化、そして社会化/社会的なものとしての公共サーヴィス――図書館は誰のものか

三、社会的な統治の拠点をつくるには
国家が退場した時代に/新しい連帯の基盤を可視化する/社会的所有と市場/地方都市と社会的合理性

第二章 労働はまだ社会的なものの基盤たりうるか

基調報告(宇城輝人)

討議
一、「賃労働社会」の再検討
物であり、人格である労働/賃労働の外延――「家事労働に賃金を」が含意するもの

二、労働社会のディストピア
「低‐雇用」の広がり/雇用以外の道はあるのか?/日本的雇用/「新しい労働社会」の行く末

三、労働の排他性と必要に応じた分配
分配の三つの原理と社会的なもの/雇用という規範の脆弱化/雇用と労働の排他性と自由

四、ディストピアをどう回避するか
他者への気遣いをどう組み立てなおすか/社会保険に連帯はあるのか/労働社会のディストピアと賃労働からの解放

第三章 社会的なものと/の境界

基調報告(宇野重規)

討議
一、市民宗教――社会的なものの臨界?
境界と分離、媒介/ルソーの「市民宗教」をめぐって/「宗教を世俗化する」とは

二、都市――社会的なものの場所?
コミュニティへのコミットメント/コミュニティか都市か/コミットメントの単位

三、移動と移民――社会的なものの試金石?
インターナショナルな思考はなぜ不可能になったか/社会的なものとネイション、その境界を開く

第四章 社会的なものの認識の歩みとデモクラシーの未来

基調報告(小田川大典)

討議
一、生命の発見と社会的なもの
ミルのリベラリズムとソーシャル・サイエンス/機会モデルと生命モデル/有機体説と進化論/社会的なものと生命モデル

二、アレントをどうとらえるか
社会的なものと社会問題/アレントと社会的なもの/三つの領域――経済、政治的なもの、社会的なもの/アレントと統治の問題

三、議会制民主主義と社会的なものへの意志
議会制民主主義を再度問う/社会的なものを求める力/散乱のなかでの意志の衰弱/政治的なもの――折り目と襞を刻む

第五章 日本における社会的なものをめぐる抗争

基調報告(酒井隆史)

討議
一、社会的なものと植民地の問題
大正末期大阪における社会的なものの上昇/社会的なものではない「社会」の可能性/植民地と社会的なもの/社会政策とコロニアリズム

二、都市という問題
「出稼ぎ型社会」と都市/都市と移民――見え隠れする植民地/圧縮された変化――日本とヨーロッパの違い

三、二重構造と日本における社会的なもの
日本の二重構造とは何か/国民国家と社会的なもの/社会の透明化――家(族)という空間/「社会」から「厚生」へ/二重構造が開く社会的なもの/国家はあとからやって来る/二重構造と自民党政治/「社会」の可能性をどう開くか

第六章 〈3・11以後〉と社会的なもの

基調報告(前川真行)

討議
一、撤退する国家
時代はソルニットのものか/国家の撤退、コミュニティの衰退/ソルニットが提起する人間観

二、中間集団と公共性
日本における中間集団/対立を隠蔽する「新しい公共」/日本的状況における「個人化」

三、地方を収奪する中央
東京は都市ではない/東京よ、独立せよ

四、原発と社会的所有
エネルギーの社会的所有/私有の論理にいかに対抗するか/ソーシャルとネオリベの複雑な関係/オルドー自由主義をいかに超えるか/〈3・11以後〉とは何か

おわりに(宇城輝人)

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