ポストケインズ派経済学入門
新自由主義に対抗するポストケインズ派の理論と政策。
市場への介入と完全雇用政策を主張し、自由市場政策と新古典派経済学への体系的な代替案を提示するポストケインズ派。従来難解で知られたその理論を初学者向けに平易に解説し、その政策的インプリケーションを明らかにする画期的入門書。
「VI おわりに」より
ケインズに触発されたポストケインズ派は、資本主義を自発性と技術革新を促進するシステムであるとみる。とくに、所得分配や、すべての社会階層への公的サービスとインフラの提供に関して、資本主義は、その欠点とその過剰を処理できる国家や民主的な制度によって支えられるならば、効率的な経済システムとなりうる。
本書の一貫した基本的テーマの1つは、自由放任状態にある資本主義は、破壊的な競争と浪費を招くということである。すなわち、国家介入がなければ、資本主義は不安定性と景気循環を生成する。そして資本主義それ自体は、完全雇用も十分な水準の総需要のいずれも保障できない。
新古典派経済学とは対照的に、ポストケインズ派は、この資本主義の不安定性を、競争力や競争メカニズム、もしくは価格柔軟性の欠如の結果であるとは考えない。それどころか、価格管理、慣習、(資本の自由な移動の制限といった)規制が、経済システムの安定性を強化するとポストケインズ派は信じている。
【著者紹介】
著者:
マルク・ラヴォア(Marc Lavoie)
オタワ大学社会科学学部経済学科教授。カールトン大学卒業。パリ第1大学で修士号・博士号取得。おもな著書に、Monetary Economics:An Integrated Approach to Credit,Money,Icome,Production ande Wealth(Palgrave/Macmillan,2007,W.Godleyとの共著), Foundations of Post-Keynesian Economicis Analysis (Edward Elger, 1992)など。
訳者:
宇仁宏幸(うに・ひろゆき)
京都大学大学院経済学研究科教授。
大野 隆(おおの・たかし)
立命館大学経済学部准教授。
はじめに
I ポストケインズ派という異端
1 誰がポストケインズ派なのか
2 異端派経済学の特徴
3 ポストケインズ派経済学の本質的特徴
4 ポストケインズ派理論のさまざまな潮流
II 異端派ミクロ経済学
1 消費選択理論
2 寡占的な市場と企業の諸目的
3 費用曲線の形状
4 価格設定
5 費用マージンの決定要因
6 マクロ経済理論にとっての含意
III マクロ経済的貨幣サーキット
1 ポストケインズ派の貨幣分析のおもな特徴
2 民間銀行と中央銀行の関係
3 銀行と企業の関係
4 貨幣的経済の体系的見方
IV 短期:有効需要と労働市場
1 有効需要とその構成
2 カレツキ・モデル
3 カレツキ・モデルのさらなる展開
V 長期:古い成長モデルと新しい成長モデル
1 古いポストケインズ派成長モデル
2 新しいカレツキ・モデル
3 カレツキ・モデルの拡張と批判
VI おわりに
参考文献
訳者あとがき
索引
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定価 3,520円(税込)