公共性の法哲学

公共性の法哲学

巷に溢れる公共性言説の危うさと困難さを問い、多元的社会における公共性概念の再定位に挑む刺激的論集。

著者 井上 達夫
ジャンル 法律・政治  > 法哲学・政治思想
出版年月日 2006/12/01
書店発売日 2006/10/30
ISBN 9784779501142
判型・ページ数 A5 ・ 408ページ
定価 3,850円(税込)

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公共性とは何か? 大好評、忽ち重版!
巷に溢れる公共性言説の危うさと困難さを問い、多元的社会における公共性概念の再定位に挑む刺激的論集。

■本書「まえがき――公共性の危うさと困難さ」より抜粋■
公共性言説がかくも繁茂している現状に対し、何か胡散臭い、何か危ないと感じる向きも少なくないだろう。…人々が公共性概念の危険な操作可能性への警戒心を捨てて、自己の主張に高値をつける手軽で便利な手段をこの概念に求めて群がる「知的バブル」がそこに潜んでいるのではないか。この懐疑から出発して、公共性概念を「問題化」する共同研究を我々は企て、実行した。怪しげな公共性言説を批判的に分析し、公共性概念に批判に耐えるだけのまともな知的・規範的脊椎があるのか、あるとすればそれは何かを見極めることが、この共同研究の目的であった。その成果をまとめて世に問うのが本書である。

【著者紹介】
編者:
井上達夫(いのうえ たつお)
1954年生まれ。東京大学法学部卒業。現在、東京大学大学院法学政治学研究科教授(法哲学)
『共生の作法――会話としての正義』(1986年、創文社)、『他者への自由――公共性の哲学としてのリベラリズム』(1999年、創文社)、『現代の貧困』(2001年、岩波書店)、『体制改革としての司法改革――日本型意思決定システムの構造転換と司法の役割』(共編著、2001年、信山社)、『普遍の再生』(2003年、岩波書店)、『法という企て』(2003年、東京大学出版会)など、著書多数。

執筆者:
瀧川裕英(たきかわ・ひろひで) 大阪市立大学大学院法学研究科助教授(法哲学)
大屋雄裕(おおや・たけひろ) 名古屋大学大学院法学研究科助教授(法哲学)
橋本 努(はしもと・つとむ) 北海道大学大学院経済学研究科助教授(経済思想)
桂木隆夫(かつらぎ・たかお) 学習院大学法学部教授(法哲学・公共哲学)
石山文彦(いしやま・ふみひこ) 大東文化大学法学部教授(法哲学)
田島正樹(たじま・まさき) 東北芸術工科大学教授(哲学)
谷口功一(たにぐち・こういち) 首都大学東京都市教養学部法学系准教授(法哲学) 
神江沙蘭(こうのえ・さら)  東京大学大学院法学政治学研究科博士課程(法哲学)
吉永 圭(よしなが・けい) 東京大学21世紀COEプログラム「国家と市場の相互関係におけるソフトロー」特任研究員(法哲学・法思想史)
横濱竜也(よこはま・たつや) 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程(法哲学)
池田弘乃(いけだ・ひろの) 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程(法哲学)
大江 洋(おおえ・ひろし) 北海道教育大学教授(法哲学)
稲田恭明(いなだ・やすあき) 東京大学大学院法学政治学研究科助手(法哲学)
松本充郎(まつもと・みつお) 高知大学人文学部講師(行政法・環境法・法哲学)
奥田純一郎(おくだ・じゅんいちろう) 上智大学法学部助教授(法哲学、生命倫理)
安藤 馨(あんどう・かおる) 東京大学大学院法学政治学研究科助手(法哲学)
浦山聖子(うらやま・せいこ) 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程(法哲学)
郭 舜(かく・しゅん) 東京大学社会科学研究所助手(法哲学・国際法)
吉良貴之(きら・たかゆき) 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程(法哲学)

まえがき――公共性の危うさと困難さ

第I部 公共性とは何か――多元的世界における公共性概念の再定位
第1章 公共性とは何か(井上達夫)
1 何の公共性か 2 公共性概念における理由の基底性 3 公共的理由の規範的構造
第2章 公共性のテスト  普遍化可能性から公開可能性へ(瀧川裕英)
1 普遍的法則 2 正義の普遍主義的要請 3 応答責任
第3章 討議は何故必要か?  公共性と解釈的実践(大屋雄裕)
1 傾向性としての公共性 2 先取りとしての公共的討議 3 自発的公共性の可能性と限界 4 普遍性創造としての解釈
第4章 公共性の成長論的再編(橋本努)
1 はじめに 2 公共性の修辞学 3 「残基」としての公共性 4 成長論の四つの伝統
第5章 市場平和と市場の公共性(桂木隆夫)
1 はじめに 2 合意形成 3 貧富の差について
第6章 多文化社会と文化の公共性  文化政策学と多文化主義のアプローチ(石山文彦)
1 文化政策学と「文化」 2 多文化主義と「文化」 3 文化に関する新たな公共性問題 4 結語
【コラム】公共性を巡る対話(安藤馨・浦山聖子)

第II部 法の公共性――法概念論と法実践論の転換
第7章 公共性の母体と革命的法創造(田島正樹)
1 ギリシアの神々 2 民衆法廷 3 決断する主権者 4 革命的法創造 5 戦争法廷 6 愛国心と左翼
第8章 立法過程における党派性と公共性(谷口功一)
1 問題が正しく説明されさえすれば、2 「哲学者」と「立法者」の対話 3 「問題」の解析 4 終節
第9章 民主的公共性における世論・運動・制度の役割(神江沙蘭)
1 序 2 民主的公共性の原理的基礎 3 議会・選挙制度の規範的意義 4 民主的公共性と制度設計 5 結び
第10章 法の限界問題と法の公共性  ミルとフンボルトの議論を素材として(吉永圭)
1 フンボルトの見解 2 ミルの見解 3 両者の議論の検討 4 「正としての人間観」 5 「正としての人間観」の課題
第11章 悪法問題と法の公共性(横濱竜也)
1 法による理由の調整――ラズの置換理由論 2 権力を制約する法――シャピロ・キャンベルのルールによる統治 3 ドゥオーキンの誠実性論 4 ソーパーの正義要求論
【コラム】虜囚から大統領への手紙  国際社会における公共性をめぐって(郭舜)

第III部 法における公共性――法価値論の脱構築と再構築
第12章 <性>の公共性  法における社会改革の位置づけ(池田弘乃)
1 はじめに 2 フェミニズムと「立法問題」 3 the personal is political 4 おわりに――法の位置
第13章 教育・子育ての私事性と公共性  権利概念の関係論的再編(大江洋)
1 リベラルな国家と教育・子育て 2 親の教育・子育て権(権限) 3 子どもの権利 4 教育・子育てと公共性
第14章 シティズンシップ概念の再編と公共性  外国人の参政権問題を手掛かりに(稲田恭明)
1 問題の所在 2 国民主権論と外国人の参政権 3 国民国家型シティズンシップの形成と動揺 4 シティズンシップ概念の再編
第15章 自然環境問題における公共性(松本充郎)
1 はじめに――本稿が対象とする問題と本稿の射程 2 理論的争点 3 自説の構成――ハーディンとオストロムの議論を踏まえて 4 結びに代えて
第16章 死の公共性と自己決定権の限界(奥田純一郎)
1 はじめに 2 死は私事か?――失われる事で初めてわかる「私」=「自己」の構造:自己決定権の外在的検討 3 批判への応答――「自己」の構造と死の問題のより深い理解のために 4 結びにかえて
【コラム】世代間正義と公共性  なぜ将来世代を思い煩わなければならないのか(吉良貴之)

あとがき

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