最近,TV番組などでIQという言葉が頻繁に使われるようになってきました。若い方は無理でしょうが,数十年前のTV番組をご存知の方なら,「以前にもIQとか天才児がTVによく出ていた時期があったな」と記憶をたどることができるでしょう。番組づくりの素材が,年月の流れとともに一回りしたのかもしれません。
IQが高いと聞くと,多くの人が「頭がいい人なんだね」というのではないでしょうか。では逆に,「頭がいい人」はみんなIQが高いのでしょうか?
「頭がよい」というのは便利な言葉で,いろいろな対象に使えます。他者よりも早く問題が解ける人,効率よく多くのことを記憶できる人,よりよいアイデアが出せる人,他人のことを深く理解できる人,適当ですばやい判断が下せる人…。このような人たちを形容するのに,「頭がよい」という言葉は適当なものといえるでしょう。
残念ながら,心理学には一般的に使われる「頭のよさ」という言葉とぴったり符合するような概念はありません。これは,先にあげたように「頭がよい」という言葉が指す範囲は非常に広いので,心理学的な定義ができないということに起因しています。
本書5章にまとめられているように,IQはIntelligence Quotient,つまり知能を指数で表示するという一つの表現方法なのです。そして,「知能」自体についてもさまざまな考え方があり,定義があるのです。つまり,IQは「頭のよさ」を示す一つの指標といえるのですが,逆にいうと,たった一つの指標でしかありません。IQでは表現できない「頭のよさ」がたくさんあると考えられます。つまり,「頭がいい人」はみんなIQが高いとは決していえないのです。
これは,ダニエル・ゴールマンによる著書で広く知られるようになった「こころの知能指数;EQ(Emotional Intelligence Quotient)」にもあてはまります。日常的に使っている「頭がよい」ということは,IQではなくEQの高さで決まるわけでもないのです。頭のよさを表現するのは,実はとても難しいことなのです。